【息もできない】は感性を強く揺さぶられる作品。あらすじ&考察

息もできない映画

韓国映画【息もできない】を視聴。

借金取りをしている暴力的なサンフンは、勝気な女子高校生と知り合うが、お互い似たような境遇にいることから次第に心を通わせていく。

【息もできない】のおすすめポイント

  • おすすめポイント①:同じ傷を抱えたオジサンと女子高校生の交流
  • おすすめポイント②:主演も務める監督が込めた深いメッセージ
  • おすすめポイント③:韓国が抱える社会の闇を描く

こんな方におすすめ

きれいごとではないリアルな感情にグッときたい方

作品概要

  • 公開:2008年
  • 制作国:韓国
  • 上映時間:130分

キャスト

  • ヤン・イクチュン
  • キム・コッピ
  • イ・ファン
  • パク・チョンスン
  • キム・ヒス

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【息もできない】のあらすじ(※ネタバレあり注意)

高利貸しの会社で借金取りをしているキム・サンフン(ヤン・イクチュン)は、ヤクザのように暴力を使って取り立ての仕事をしている。

実はサンフンには、悲劇的な過去があった。父(パク・チョンスン)が家族に暴力を振るう男で、子供の頃父から母をかばった妹が刺されて死に、そのショックで母が外に飛び出して事故死するという悲惨な出来事があり、それが深い傷になっていたのだった。その父は今は出所し、サンフンと暮らしている。

そんなサンフンは、行き場のない怒りや苦しみを暴力という形でしか発散できない反面、思いやりのあるところもあり、甥のヒョンイン(キム・ヒス)のことをとても可愛がっていた。

しかし、愛情表現の仕方がわからない不器用なサンフンは、ボーナスが出るとヒョンインに小切手を無理やり押しつけるようなことをしてしまう。それに反発するヒョンイン。その態度に傷ついたサンフンは、道を歩きながら思わず唾を吐いた。するとたまたまそこにいた女子高校生ハン・ヨニ(キム・コッピ)の制服に唾が飛んでしまい、彼女は怒り出す。

ヨニは気の強い少女だったので、見た目の怖いサンフンにも平気で詰め寄り、ビンタをした。サンフンも思わずビンタをし返すと、ヨニはその場で気絶。驚いたサンフンは、さすがに彼女をそのまま放置するわけにいかず、目が覚めるまでそこにいた。

すると、気がついた彼女はまた怒ってサンフンに唾を吐きかけ、治療費を要求する。サンフンがしかたなく飲み物を買って渡すと、ヨニはサンフンの連絡先を聞き出し、自分が連絡したら必ず返事をするように言い渡した。

ある日サンフンは仕事で暴れた勢いで仲間にも暴力を振るい、それを注意した社長のマンシク(チョン・マンシク)にも暴力を振ってしまう。そんな自分の暴力性を自覚しているものの、どうしても感情をコントロールできないサンフンはイライラ。ヨニからの連絡も無視してしまった。

その後姉と会っているところをヨニに見られ、奥さんと勘違いされてからかわれたことでまた怒り出すサンフン。そして、声をかけてきた警察官に暴力を振るってしまうが、ヨニに助けられてその場はおさまり、自分と街へ行くように命じられる。ヨニと一緒に買い物をしながら、サンフンはなぜか居心地の良さを感じるのであった。

実はヨニの家庭環境も複雑なものだった。ヨニには帰還兵の父と弟ヨンジェ(イ・ファン)がいるが、高校に行かないでダラダラした生活を送っているヨンジェからはいつもお金をせがまれ、戦争の後遺症で精神障害を患っている父は、母の死がわからない。ヨニはまだ高校生なのに、全ての家事を1人でこなしていた。そしてヨニも、父から暴力を受けていた。

ある日今度はサンフンがヨニを呼び出し、ヒョンインを連れて一緒に楽しい時間を過ごす。サンフンの隠れた優しさに触れたヨニ。サンフンもヨニといると素直な気持ちになれることに気づき、2人はお互いを認め合う仲になった。

しばらくして、ヨンジェがサンフンの下で働き始めた。しかし、彼がヨニの弟であることをサンフンは知らず、ヨンジェの方も姉とサンフンが付き合っていることを知らない。ヨンジェはサンフンの暴力に反発を感じ、次第に恨みを募らせていく。

ヨニと出会ったサンフンは生き方を改めようと思い、まともな社会人として通帳を作り、携帯を持つことにした。しかし、姉と父がこっそり会っていることを知り、逆上して姉に暴力を振るってしまう。

そんな時父が自殺未遂をした。父を許せないサンフンは、家に帰ると父にも暴力を振るっていたが、父はなぜか無抵抗だった。手首を切った父に驚いたサンフンは、父を病院へ運び、自分の血を輸血。そのお陰で父は何とか一命をとりとめたが、このことでショックを受けたサンフンは、ヨニに会いたくて電話をかける。

ちょうどその頃、家賃を稼ぐためにアルバイトを始めたヨニが、忙しくなって家事に手が回らなくなったことで父が腹を立て、包丁を持ってヨニを追いかけまわしていた。何とかそこから逃げ出したヨニは、サンフンからの連絡を受け、河原で会うことになった。

疲れ果てていた2人は近況を静かに報告しあい、お互いの境遇を慰めあう。ヨニにそっと膝枕をしてもらうサンフン。2人は声を押し殺して泣くしかなかった。

サンフンはついにカタギになると決め、それに賛成したマンシクも、引退して焼き肉屋を始めるという。サンフンはヒョンインの学芸会にヨニを誘い、最後の仕事に出かける。

ところが、その仕事でまた暴力を振るったサンフンに我慢できなくなったヨンジェが、サンフンを殴ってしまう。ヨンジェはそのまま金を奪って逃走。ヨニとの待ち合わせ場所に、サンフンが現れることはなかった。

それから数日後、マンシクが開業した焼き肉屋に招待されたヨニ。その帰り道、街で屋台をメチャクチャにしている男たちの中にヨンジェがいた。暴れまわる弟の姿に死んだサンフンの面影を見たヨニは、懐かしくも切ない気持ちでいっぱいになるのだった。

【息もできない】の考察

「自分は家族との間に問題を抱えてきた。このもどかしさを抱いたままでは、この先生きていけないと思った。すべてを吐き出したかった」というヤン・イクチュン監督の言葉通り、この映画では彼の個人的な記憶が描かれていることは確かでしょう。

 

資金不足のため友人から借金をし、家を売ってまで完成させた執念の監督デビュー作。その結果、この作品は数々の賞を受賞して大成功をおさめました。ちなみに監督のこだわりは、打ち合わせやリハーサルをしないワンテイクでの撮影だったとか。俳優たちの生の感情が爆発しているのは、きっとそのせいですね。

 

これでもかと続く暴力の連鎖。登場する女性たちはみな、男から暴力を受けています。そのどうしようもない現実を叩きつけたこの作品には、心の叫びと苦しみが容赦なく描かれ、それがまた観る者の感性を強く揺さぶります。

 

サンフンはひっきりなしに暴力を振るいますが、それはまるで彼の言葉のよう。暴力でしか気持ちを伝えられない哀しい人間ではありますが、その奥底にある彼の感情を読み取ることはできるでしょう。特に2人が河原で堪えきれずに泣くシーンは、もらい泣きすること必至です。

 

社会の底辺にいる者たちに目を向け、彼らの痛みに寄り添う。確かにつらいストーリーではありますが、不思議と目を背けることができず、どんどん引き込まれてしまう。喜怒哀楽がはっきりしていて、感情移入がしやすい。それが韓国映画の魅力なのでしょうね。

 

暴力の中で育ち、愛情に飢えている人間を救うのは、結局愛情であるというメッセージ。似た者同士が必死で支えあう姿は健気でもあり、たとえハッピーエンドではなくても、1人の男が彼なりに立ち直ろうしていたのだということが一種の救いにもなっています。

 

また、父親の存在が大きく扱われていることも、深く考えさせられるテーマです。

 

実はヨニの父は、ベトナム戦争の帰還兵。1966年から1973年まで多くの韓国人がベトナムに派遣され、その外貨のお陰で韓国は高度成長を迎えることができました。いわば、この映画に登場する親たちは、国の豊かさと引き換えに犠牲を強いられた世代。そんな韓国の歴史的背景を知ると、彼らの追い詰められたような暴力性が理解できるかもしれません。

 

それにしても、韓国の女性はみな気が強い!韓国映画を見るたびに、つくづくそう思います。この作品を見て韓国映画に興味を持ったら、ぜひほかの韓国映画にもチャレンジしてみては?どの作品もレベルが高いので、見てソンはありませんよ。

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みんなのレビュー

  1. 評価

    4

    暴力を振り、暴力に振り回されてきた主人公・サンフン。
    素行も言葉遣いも悪いけれど、ちょっとしたしぐさから彼の愛情や優しさがにじみ出ていて、その不器用さになんとも切ない気持ちにさせられます。

    サンフンとヨニの生き様には、ただただ圧倒されます。
    お互いのバックホーンや抱えている悩みは二人の中で表面上は共有されていないけれど、観る側はそれらを分かって観ているので、言葉ではあらわされていないけれど互いを思いやっているのがとても伝わってきて、より一層切なく感じます。

    ラストの、ヨニが暴力を振るうヨンジェの姿にサンフンの面影を重ねるシーンは、ヨニのサンフンへの想いと暴力の連鎖の悲しみがどっと押し寄せてきて、心に重くのしかかってきました。

    貧困、家族、愛…観終わったあと、いろんな考えが巡ってしまう、心にぐさりと刺さる一本です。

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